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[0009][想い出] 0−3776を歩くぞ! 平成07年度 島根 県 (2003/01/25) |
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0−3776を歩くぞ!
その0 頂上にて
富士山の頂上に立った瞬間、俺は何とも言えない達成感に包まれた。
「俺は五合目まで車で来たお前らとは違って一番下から歩いてきたんやぞ!どうだまいったかまいったといえ、うはははははははぁーーーー!」と声高に自慢したい気持ちをぐぐっと抑えて日本の最高地点でガッツポーズを決めた後、僕はザックからペットボトルを取り出し、中身を頂上の三角点にぶちまけた。きっと後にも先にもあんな爽快な気分は味わえないに違いない。
その全ては田子の浦から始まったのである。
その1 裏切りの田子の浦海岸
「田子の浦にうちいでてみればって、、、どこに海岸あるんじゃーい!テトラポットだらけやないかー!ふうふうふう、ま、まあええわ、探せばあるわいな。えーと、うちいでてみれば真白にぞ富士の高嶺にって、、、富士山なんか全然見えんじゃんかー!どうなっとるんじゃい!!」
全く波乱含みのスタートであった。
当初の予定では堤防を登りきったところにはどこまでも続く白い海岸線にまだ柔らかな夏の日差しに包まれながら息せき切ってゴールデンレトリバーと走りぬける素敵なお姉さんしかも海岸についた足跡は穏やかなしかし大きな包容力を持った太平洋の波が静かに消していくというような絵に描いたようなさわやかな朝の1ページがええいっとばかりに展開されるはずであった。
堤防を登りきったところにはどこまでも続くコンクリート製のテトラポットに今日も猛暑を予感させる夏の日差しに包まれながらはぁはぁひぃひぃと息を切らして喘ぐように走っているおじちゃんおばちゃんしかも海岸に残されていたのは花火のカスや漂着物ばかりで朝っぱらから威勢のいい荒々しい太平洋の波はザッパーンズザザザザーとテトラの群れにぶち当たり砕け散っていくばかりであったのだザザザザーン。
がっくしとほほ。妄想しすぎなのは認めるが、しかしッ!こんな仕打ちはないぞ、田子の浦!
まあ、現実なんてこんなものよと頭を切り替え、テトラポットの隙間に波打ち際を見つけた僕は用意していたペットボトルに海水を汲むと、波の引いた瞬間ダッシュして海に入り、ガッツポーズを一人きめきめしたのち、ロングジャーニーを歩き出したのである。
その2 ロード時々樹海
とにかく暑い。
雨よりは晴れていたほうがいいに決まっているが、その時ほど真夏の太陽を憎らしく思ったことはなかった。
STBした吉原駅を出発してすぐはまだ夜の冷気がそこここに残っていて楽勝ムードが漂ったのだが、7時8時を過ぎるころには「今日も張り切ってやりますけんねぇ、ギラギラギラッ!」と太陽は容赦なかった。んもう、無条件降伏したくなるような暑さである。しかも日陰はどこにも見当たらない。アスファルトは熱せられ、足元からも容赦ない熱気がまとわりつく。
「くそう、逃げ出したいよー、暑いよー、樹海行くのいやだよー」となさけない独り言をぶつぶつ呟きながら、ただひたすら歩き続けた。
一人でいるというのは誰にも気を使わなくていい・ペースが自由に決められる、という利点はあるが、それだけである。それ以外はなーんもいいことはない。
特に僕にとって最大の難関である富士の樹海を越えるときは半泣きだった。傍らに人がいれば「へへん、ぜーんぜん怖くなんかないさ、おばけなんてうーそさッ!」と鼻歌なんだろうが、なーんか傍らに人が立っていそうなので、なるべくいらん事を考えつつ森の中を見ないように進んでいた。
しかし、人というのは馬鹿な生き物である。「あの立ち入り禁止の札はきっとあの先に工事現場でない何かがあるに違いない」だの「ふっと今右側を見ると人がぶら下がっててこっちにおいでーなんて誘われたらはたしてことわりきれるのかっ!」などと考え怖くなり、重いザックを担いでいるのに、ダッシュかけて走ってしまうのである。
灼熱のロードと背筋の凍る樹海、こいつらを越えてキャンプ場に着いたときは飛び上がるほどうれしかった。これでテン場代が千円じゃなかったらもっとうれしかったのだが。
その3 閑話休題2003
僕は当時、作家・原田宗典氏のとりこだった。
その頃(平成8年)、氏はすでにメジャーな物書きの一人であり著作物も多く出回っていた。
志賀直哉を敬愛しまたそこから多大な影響を受けている氏の短編には傑作が多く、特に「0(ゼロ)をつなぐ」という作品集は秀逸である。ぜひ一読をお勧めする。
氏はエッセイストでもある。
そしてそのエッセイが大爆笑なのである。本当に爆笑、げらげら笑ってしまう。百聞は一見にしかず。ぜひ「東京困惑日記」あたりから攻めていただきたい。
そんな当時書いたのがこの文章である。
なんとか氏に一歩でも近づきたい、あんなふうに書いてみたいというのがありありと出ている。
ほんと、赤っ恥だが、今思うとそんな情熱がうらやましい気もする。
ちなみに、「未知の奥悠々奇行?その1・その2」にも影響を受けた作家が存在する。
風間一輝氏である。
彼の出世作「男たちは北へ」は一級のロードノベルである。一読をお勧めする。
つづく
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